1.曲選びはレッスンの中でもっとも大切な対話
発表会準備のスタート地点は、「曲選び」です。
でもこれは単なる作業ではなく、子どもにとって大切な自己決定の第一歩。
「どんな曲を弾きたい?」
「明るいのがいい?しっとり?キラキラ?」
こんな問いかけから、子どもは“自分の中にある気分”に耳を澄まし始めます。
まだ言語化が難しい年齢でも、音楽なら自分の感覚で選べます。
曲選びのプロセスは、
「私はこうしたい」
という自分軸を育てる、尊い時間です。
2.“この曲!”と心が動く瞬間の、学びのスイッチ
曲をいくつか聴くと、ほとんどの子に“反応の瞬間”があります。
眉が上がったり、背筋が伸びたり、じっとに聴き入ったり。
心が曲と出会う瞬間。
この瞬間が来た子は、ぐんと成長します。
「これ弾きたい!」と選んだ曲は、努力を後押しする力があります。
感性と意思が重なることで、集中力も継続力も自然と育っていくのです。
3.難易度よりも、“物語を感じられるか”を優先する理由
発表会の選曲では、技術レベルももちろん考慮しますが、最優先はそこではありません。
大切なのは、
「その曲に物語を感じられるか」。
幼児さんでも、小学生でも、
曲の背景を感じたり、自分なりの情景を思い浮かべられる曲は、
音に命が宿りやすいのです。
「この部分は雨が止んだ感じ」
「ここは星が光るみたい」
こうしたイメージの芽が、演奏を豊かにしていきます。
まずは心が動くこと。そこが発表会の根っこです。
4.選んだ曲を“自分の表現”にしていくステップ
曲を決めた後は、いよいよ“自分の曲”にしていく時間が始まります。
レッスンでは、
・どんな音色にしたい?
・どこが難しい?どこが気に入った?
・どんな情景が浮かぶ?
こんな質問を重ねながら、子ども自身が曲を深く感じられるよう導きます。
モンテッソーリ教育でも北欧教育でも大切にされるのは、
「子どもが自分の感覚で学びをつかむ過程」です。
先生が全部指示するのではなく、
子どもが感じ、考え、決めていくからこそ、演奏が“自分の声”になります。
5.発表会は“表現の舞台”。だからこそ選曲が特別になる
選曲は、発表会の行方を決める大事な始まりです。
この時点で、子どもたちの心はもう舞台に向かって進み始めています。
舞台で弾くという経験は、
「自分が選んだ曲を、自分の手で届ける」
という自己表現の大きな冒険。
幼児さんでも、小学生でも、大きな生徒さんでも。
心が動いて選んだ曲なら、その音には確かな物語が生まれます。
発表会は、立派に弾けるかどうかの場ではなく、
“自分の表現を育てていくプロセスの結晶”
曲選びは、その最初の一歩。
これからどんな花が咲くのか、私もとても楽しみです。
