― できた!より、「やってみたい!」を大切に ―
① 「できた」を積み重ねる前に、大切なこと
ピアノを習い始めたばかりの子どもたちは、
「できた!」という瞬間が大好きです。
でも、モンテッソーリ教育の視点では、
「できた!」よりも「やってみたい!」という気持ちこそ、
学びの本当の出発点だと考えます。
大人が用意した“できたこと”を喜ぶだけでなく、
自分の心から湧き出た“やりたい”に出会えること。
そこに、子ども自身の成長のエネルギーが宿ります。
② 自分で選ぶことで、自分を信じられるようになる
モンテッソーリ教育の特徴のひとつが「自由に選ぶ」こと。
子どもが自分で教材を選び、
自分のペースで取り組むことで、
「自分で選んでいい」「自分で決めていい」という感覚が育ちます。
ピアノの時間でも、
「今日はこのカードをやりたい」「この曲をもう一度弾きたい」と
自分で選ぶことを大切にしています。
それは、単なるレッスンの工夫ではなく、
“自分の選択を信じる力=自己肯定感”を育てる大切なプロセスなのです。
③ 失敗しても大丈夫。“やり直し”が学びの一部
モンテッソーリの教具は、「間違っても自分で気づける」ようにできています。
大人に直される前に、自分で「ちょっと違うかも」と感じ取れる仕組みです。
ピアノでも同じです。
たとえば、音を外してしまったときも、
「違う音だったね」ではなく、
「どんな音に聴こえた?」と問いかけます。
子どもが自分で“気づき”を得た瞬間、
そこには失敗の痛みではなく、発見の喜びがあります。
この「間違えても大丈夫」「自分で直せる」という経験こそ、
自己肯定感の種になるのです。
④ 「認められる」より、「感じてもらえる」安心感
自己肯定感を高めるために大切なのは、
「できたね」「上手だね」と褒めることだけではありません。
子どもが感じていることを、
“そのまま受け止めてもらえる”という安心感が何よりの土台になります。
「その音、やさしいね」
「今の弾き方、気持ちよかったね」
「聴いてて、あったかい気持ちになったよ」
そんな風に、結果ではなく“心の動き”を言葉で受け止める。
これが、モンテッソーリ的な関わり方の基本であり、
ピアノの世界でもとても大切にしていることです。
⑤ 自分の中にある“好き”が、肯定感を育てる
モンテッソーリ教育では、
「子どもの中には、自分を成長させる力がある」と考えます。
ピアノにおいても同じです。
子どもたちは、音を聴きながら自然に感じ取り、
自分の“好き”を見つけていきます。
この“好き”がある限り、どんなに小さな歩みでも前へ進めます。
好きだからこそ、挑戦できる。
好きだからこそ、つまずいても立ち上がれる。
その小さな「やってみたい」の積み重ねが、
子どもたちの中に確かな自己肯定感を育てていくのです。
自己肯定感とは、
「上手にできる自分」を信じる力ではなく、
「どんな自分も大丈夫」と思える心の土台です。
モンテッソーリ式ピアノレッスンでは、
音を通して自分を知り、感じ、信じる時間を大切にしています。
ピアノを弾くことは、
“自分を好きになる練習”でもあるのです。
